ご指名

ホストクラブじゃないんですけど。
銀座でもないんですけど。
指名制度って、普通に自然なことだと思う。


わたしだって、わたしの髪をデザインする美容師はちゃんと指名したい。
その美容院が良くて通っているわけじゃなく、その人がいいから通っている。
誰でもいいわけじゃない。
信頼して、安心して任せられるかがポイントなのだ。


ご指名を目標にしているわけではない。
でも、こだわりを持って真剣に向き合っていると、結果的にご指名を受けることになる。
みんな安心して任せたいのだから。
続けて通うなら尚更、冒険や賭けは求めない。


信頼は人についている。
場の雰囲気も、人によって変わる。
そしてその結果、効率も生産性も変わってくる。


正しい評価とは何なのか。
いつもそれを考えてしまう。
ご指名を受ける率や継続率など、数字で表せる部分もあるだろう。
でも「成果物」という点では、必ずしも数値化できるわけではないものもある。


「価値」とは何なのだろう。
少なくとも、ご指名を受けるということは価値の一つに挙げられるだろう。
その価値を、どう評価するか。


少し前に読んだ話を思い出した。
元の文章は英語だったけど「禅」的な話で、ある人が、どうも自分には価値がないようだからもう死のうと思う、ということを賢者に聞いてもらったところ、その賢者は彼に石を持たせ、この石がいくらで買ってもらえるか市場に行って聞いてきて、でもこの値段以下なら売らないで、と言う。市場で安い値段を言われて戻って来た彼に、賢者は今度は専門家のいる場所に行って聞いてみて、売りたいと思ったら売ってもいい、と言う。市場とは全然違う高い値段を言われたけど売らずに帰って来た彼に、賢者は、「ほら、あなたもそういうことだよ、価値のわからない人に何を言われても気にすることはない、市場をウロウロして時間を無駄にするんじゃないよ」と言う。


自分の価値。
ご指名は価値の現れだ。
他人からの評価の一例だ。
それに対する誇りを持つことは、間違っていない。