雨上がりの日曜日

昨日は雨だった。
時々突風が吹いていた。
春の雨の匂いがした。
今朝シャワーを浴びたら、
いつもと同じ温度なのに身体が火照った。
甥っ子たちの家に歩いて向かっていると、暑くなったので上着を脱いだ。
もう革ジャンはいらないな。


兄ちゃん家の近くまで行くと、
ついこの間まで甥っ子たちがメダカを採ったりバッタを採ったりしていた田んぼのあぜ道が潰され、
宅地にされようとしていた。

家に着いて、
ピンポンを鳴らそうとすると、
足元にクローバーの茂みがあった。

甥っ子たちとの英語のレッスンが終わり、
お茶のひと時の後、外にいる犬を見に行った。
いつもは、人の気配を感じただけで犬小屋に逃げ込んでいた犬、コロが、
犬小屋から出てきて、
私の前で不自然な体制で固まった。
撫でてやると、頭のてっぺんの毛だけが柔らかくて気持ちよかった。
コロは、不自然な体制のまま、目も合わせることなく撫でられていて、
私が帰ろうと立ち上がると、
初めて私の顔を見上げた。
「もう、行くの?」とその顔は言っていた。
この犬、いつ私に懐いたんだろう?
いつ、私に心を許そうと、思ったんだろう?
女の子なのにコロと名づけられた犬。
人を見ると、後ずさりする犬、コロ。
東京に行くまでに私に慣れさせようと言う父に、
「こんなに逃げられてまで、どっちでもええよ。」と言っていたのは、ついこの間のことだ。
じっと顔を見られたけど、「またね。」と言ってコロに背を向けた。


さっきのクローバーの茂みに、四つ葉を見つけた。

いつもなら毟り取って帰って、しおりにするんだけど、
なんだか兄ちゃん家に生まれたしあわせを私が横取りするみたいで、
やめた。
とはいえ、
先日は違う茂みに生えていた兄ちゃん家の四つ葉を採ってしまった。
何の考えもなしに。
だから今日はやめた。
玄関先の、四つ葉のクローバー。
この家の、守り神だ。


外はもう晴れていて、田んぼ脇の菜の花が匂い立っていた。

そのうち潰されるであろうその場所は、「夢タウン北黒田」と名づけられるようだ。
幼いころに近所の友達と遊んだ思い出の場所は、こうやって少しずつ、少しずつ、確実になくなっていくんだろうな。
一体、人はどこまで家を建てていくんだろう?
人口は減っていると言われているのに、
住宅地はこんなに広くなった。
これからの子供たちは、
私のような思い出さえ、作ることができないのだろうか。


歩いていると、小さな発見がたくさんある。
花の匂い、小さな新芽、道端の草花、田んぼの土の匂い・・・。
自然が大きな力で動いているのがわかる。


家に帰って、
ずっとほったらかしにしていたので、もう生きているのか死んでいるのかも判らない状態になった勿忘草を裏庭に植えた。
母の植えたアジサイの足元に。
アジサイはもう青い葉っぱをたくさんつけていた。


裏庭に吊ってあるワイヤープラントに、いつからか苔が生えていて、
すごいなーと思っていたら、今度はクローバーが生えていた。

こちらも、すっかりほったらかして剪定をしていなかった薔薇。

大変な状態で赤い新芽が出ていた。
相変わらず、ゼラニウムが絡みついている。
正直、なぜ母がこのゼラニウムを植えたのか、皆目分からない。
明らかに母の好みではない色。
土の加減で色が変わったのかな?
そんな気に入らない花ほど、勢いがいい。


以前から、春になると復活するミニバラ。
やっぱり元気な新芽を出していた。
このミニバラを見ると、勇気が出る。


表の庭に行くと、
やっぱりいろんな芽が出ていた。
ジャスミンが赤い蕾をつけていた。

シジミバナはあっという間に枝を真っ白にしていた。

コデマリも蕾をつけている。

もう枯れたと思っていたサラサウツギでさえ、芽吹いていた。


植物は、力強く、根付いて、生命を紡いでいる。