電車の窓から

朝から晴れた日。
電車の窓から白波のように広がる雲が見えた。
西まで続くその先を追っていたら、富士山が見えた。
写真に収めたいほど美しい風景だったけど、なんとなくやめた。
そうでなくても、動く車内から写真を撮るのは難しい。


冬が近づいて、だんだんと陽が傾いていて、まっすぐ差し込んでくる。
その眩しさと、青い空と、白い雲と、雪をかぶった富士山。
ドアの窓から、ずっと眺めていた。


次の日。
晴れていたのでまたドアの窓から見ようとした。


全然見えない。
乗っている区間は同じでも、見え方が違った。
見えた日に乗っていたのは東西線
全面に光が入ってきていて、電車の窓ってこんなに広かったっけ、と思った。
次の日に乗ったのは、総武線
窓の形や角度や大きさの違いもあるだろうけど、決定的に違ったことがある。


JR線のドア窓には、広告が貼ってある。
それが、ちょうどわたしの目の前になる。


ずっと思っていた。
風景を映し出す窓に、貼られた広告。
その、違和感。
窓からの風景よりも、商業的な意向が優先されたという現実。
わたしの目線に居座る、デリカシーの欠如。


その日の夕方、走っている東西線を見てみた。
窓には注意を促すシールが端っこに貼ってあるだけで、真ん中は大きく開いていた。
普段は地下を走っている車両なのに。
かたや常に外を走っているJRの窓には、風景を遮るシールが、ど真ん中に貼ってある。


これからはもっと、狙って東西線に乗ろう。
そう思った。