帰省した帰りの便から、自分の生まれ育った町が見えた。
以前から飛行機が飛んでいるのを見上げていた割には、自分が乗ったときに飛行機からまじまじと見たり写真を撮ったことがなかった。
お天気にもよるのかもだけど、なんだか見覚えのある建物がくっきり見えて、さっきまでいた自分の町の全体図を、自分が育った環境を、再認識したような気分になった。
小さい町で、近所を歩いていただけで話題にされてしまうような窮屈さがあったけど、海が近くて田んぼがあって、自然が豊かな場所だった。
それでいて台風被害もほとんどなく、近隣が水不足でも断水にもならず、とにかく平和な町。
だからみんな地元に残るし、地元に戻る。
そんな環境に馴染めない自分は、異物なんだと思っていた。
ぽつんと独り、異なる時空から間違って落っこちてきたような気分を、小さいときから感じていた。
みんなと同じように、平和に暮らせたら。
彷徨ったり探し求めたりせず、町に残って暮らせたら。
疑問を持たず、常識に従って、地元で結婚して子育てして、普通の生活ができたら。
それでもわたしは、行かなきゃならない。
わがまちに背を向けて、行かなきゃならない。
まだ見えてない雲の上に、求めていた景色があるのかもしれないから。